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「ポーの一族」 ~永劫の時の彷徨い人
2010/04/18/ (日) | edit |
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 「ポーの一族」(作:萩尾望都)文庫全3巻 1972年~小学館・別冊少女コミック



少女漫画との出会いは、中学の初め頃です。
その頃はよく友達と、コミックの貸し借りをやってました。
誰の家にも何冊か漫画コミック置いてあるものだし、お互い好みが違うから自分で買わない漫画を読めて都合がよかった。
そんな友達の一人には、年の離れたお姉さんがいました。 そのお姉さんはもう家を出てたけど、そいつは姉さんが残してくれた少女漫画も読んでた。
そのことは羨ましくもなかったし、別に興味もなかった。
世の中に面白い漫画はいっぱいあるし、だからわざわざ少女漫画を読みたいとも思ってなかった。

そいつの家に遊びにいって、帰りにコミックを貸してもらった。 思えばこれがきっかけです。

何冊か借りた中に、「百億の昼と千億の夜」という昔の漫画がありました。
これは光瀬龍さんの小説を、萩尾望都さんが漫画にしたSFファンタジー。 これ自体は少年コミックです。
(最初 はぎおぼうと と呼んだのは俺だけじゃないハズだ!)

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俺はそれまで女性作家の細い線の絵を、ほとんど経験してません。
だから萩尾望都(はぎおもと)さんの絵は、まるで幻想の世界のように感じました。 初めて触れた萩尾さんの世界は、のように繊細で美しかった。
それはまるで触れたら壊れるのよう。

子供の頃にこの萩尾さんの漫画に触れられたのは、すごくが良かったと思う。
感謝するのは貸してくれた友達もだけど、少女コミックを残してくれたお姉さんです。

萩尾望都さんの代表作の「ポーの一族」にしても「トーマの心臓」にしても、できるなら少年少女期感受性の旺盛な頃に、その世界に触れるべきです。

子供の頃には木々には精霊がいて見えると信じていた。 目に見えないものを信じられた、イマジネーション現実が重なりあっていたそんな年代
萩尾さんの漫画は、そういう頃でないと感じ取ることのできない世界を持っています。 そして俺にそういう機会があったことに、すごく感謝したい。

「ポーの一族」は、長い時を彷徨うエドガー・ポーツネルを中心に据えて描かれる物語。
「中心に据えて」 と言うのは、彼の存在に絡んだ人々の思い出語りが、時間の流れを追って描かれるからです。

それはまるで、を越えて紡がれる叙情詩のよう。
数世代にわたりエドガーに色々な形で触れた人々の、短編集の形をとっています。
それは我々の存在する時間の中では、途方もなく永い時の歴史です。

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「バンパネラ」の言葉で世に呼ばれる、吸血鬼の一族。 それがポーの一族です。

衰退した貴族の子供、幼い10歳のエドガーと6歳のメリーベルが森に置き去られ、ポーの一村に拾われる始まりを綴る話が、「メリーベルと銀のバラ」

作中の時代は、1750年(18世紀中頃)。 舞台はイギリス
エドガー14歳の時にポーの一族に迎えられ、吸血鬼となります。
彼のが、このとき止まります。

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14歳のままもう成長することがなく、人と同じは生きられない孤独な存在となったのです。 「メリーベルと銀のバラ」は、同じ14歳まで成長した妹メリーベルエドガーが再会するまでの物語。
でもこれ、収められているの第2巻なんですよね。

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コミックの第1巻の始まりは表題の「ポーの一族」(1972年10月掲載)のあと、「ポーの村」(1972年5月掲載)、「グレンスミスの日記」(1972年6月掲載)、「すきとおった銀の髪」(1972年1月掲載)の他、「リデル森の中」(1975年4月掲載)などなど数作品が収められています。

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第2巻は先の「メリーベルと銀のバラ」(1973年12月掲載)や、「エヴァンズの遺書」(1974年11月掲載)など。

文庫最終巻第3巻は、「小鳥の巣」(1973年5月掲載)から始まり最終話の「エディス」(1976年4月掲載)まで。

そしてこの作品「エディス」の時代は、1976年です。
実に220年の永きにおよぶ、彷徨い人の物語

初めて読んだときは、なんて時間の流れがバラバラな漫画なんだろって思いました。
作品ひとつひとつは孤独や繋がりとかを感じ取る、素晴らしいものです。 だけど最初は時間の流れがよく判らなくて、いきつもどりつの感じでした。
萩尾望都さんがあえて、そういう描き方をしてるのかなって思った。

実際はその通りです。
だから作品の雑誌発表時期作中の時間には、隔たりがあります。

「ポーの一族」は何度も読み返し、そのうちにそれだけじゃないことに気付きました。
実はコミックの掲載順も、作品発表順とずれています。 といって時間枠にそって並び替えたという訳でもない。
「ポーの一族」をもっとも表している表題作を、最初にもってきたんだと理解しています。

何度か読み返すと時間が繋がり、が繋がり、そうしてあらためてこの歴史の繋がりを頭に描いた萩尾望都って作家は、なんて凄いんだろうと驚かされます。

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年をとることのない14歳のエドガー。 バンパネラであることを隠し、時に人のを糧とする永遠の存在
成長することのない彼がそれを怪しまれないように彷徨いながら、僅かに触れ合った人々。
語られるのは、多くはそういう人々の思い出です。 それからその人の人生

作品全体を通して考えさせられるのは、そこに在ることとが同じでない、という概念
を越えて変わらないものを目にした時に、想い馳せる郷愁
そして同じ姿のまま在り続けるエドガーに感じてしまう、寒くなるような孤独です。
エドガーは今も、を超えて彷徨い続けているのだろうか、と。 それは気の遠くなるような、孤独な旅だと。

あの頃、初めて知った少女作家萩尾望都だったということ。 そのこと自体が、俺にとって大きな宝物だったような気がします。




=付録=

 時間の流れに合わせて、作品を並び替えてみました。
 時間を行き戻りするのが嫌な人は、参考にしてください。
 「ポーの一族」文庫版(萩尾望都・小学館文庫)に沿っています。


1 「メリーベルと銀のバラ」<第2巻‐1話目> 1754年。エドガーがポーの一族へ迎えられる。

2 「ポーの村」<第1巻‐2話目> 1865年。グレンスミス・ロングバート男爵がポーの村へ迷い込む。

3 「エヴァンズの遺書」<第2巻‐2話目> 記憶を失ったエドガーを、メリーベルが迎えにくる。

4 「すきとおった銀の髪」<第1巻‐4話目> 初恋の相手メリーベルに、30年後のチャールズが出会う。

5 「ポーの一族」<第1巻‐1話目> エドガーがアランと出会う。

6 「ペニーレイン」<第1巻‐5話目> アランが目覚める。小さなリデルを連れていく。

7 「はるかな国の花や小鳥」<第1巻‐6話目> 妖精のように純真な女性エルゼリとエドガーの触れ合い。

8 「一週間」<第1巻‐8話目> エドガーの留守中に女の子2人と戯れるアラン。

9 「リデル森の中」<第1巻‐7話目> リデラード・ソドラ夫人がエドガーとアランの思い出を語る。

10 「ピカデリー7時」<第2巻‐3話目> エドガーとアランが訪ねたポリスター卿は亡くなっていた。

11 「グレンスミスの日記」<第1巻‐3話目> 1899年。エリザベス・ロングバートがグレンスミスの古い日記を読む。

12 「ホームズの帽子」<第2巻‐4話目> 1934年。ジョン・オービンがエドガーに会う。

13 「小鳥の巣」<第3巻‐1話目> 1959年。エドガーとアランは、ドイツの高等中学で寄宿生活を始める。

14 「ランプトンは語る」<第3巻‐2話目> 1966年。ロジャーとシャーロッテの兄妹がクエントン館へ招かれる。

15 「エディス」<第3巻‐3話目> 1976年。エディス・エヴァンズがエドガーとアランに会う


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